
腎不全の進行により透析が必要になったとき、多くの方が「透析を始めたら余命はどうなるのか?」という不安を抱きますよね。
本記事では、透析患者の平均的な余命についての現状データをもとに、透析を受けた場合・受けなかった場合それぞれの生存率を比較しながら解説します。
また、透析治療がなぜ重要なのか、その役割や生活への影響についても触れていきます。
治療選択の判断材料として、正しい情報を得ることは非常に大切です。ご本人やご家族が安心して前向きに向き合えるよう、わかりやすくまとめました。
ぜひ参考にしてください。
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透析治療は、腎不全で十分に機能しなくなった腎臓の代替として、血液中の老廃物や余分な水分を排除するために行われます。透析を受けることで、多くの人は腎機能が失われたあとも生活を続けることができます。ただし、生存率や平均余命は一般の健康な方に比べると低くなる傾向があり、日々の治療および生活習慣の管理が大きく影響します。ここでは、透析患者の余命に関するさまざまなデータや治療の重要性を解説します。透析を受けている方が前向きに治療と向き合う参考になれば幸いです。
透析患者の余命は年齢や原因疾患によって大きく変動します。年齢が若いほど合併症が少なく、体力があるため、長期間の透析継続が可能な場合が多い一方、高齢になるほど合併症のリスクや体力の低下などから、平均余命は短くなる傾向があります。 以下は、過去の統計に基づき、透析導入後の男性・女性の平均余命と同年代の一般人口の平均余命を比較した一例です。
| 年齢 | 透析患者 平均余命(男性) | 一般人口 平均余命(男性) | 透析患者 平均余命(女性) | 一般人口 平均余命(女性) |
|---|---|---|---|---|
| 30歳 | 27.36年 | 49.23年 | 30.35年 | 55.97年 |
| 35歳 | 23.72年 | 44.43年 | 26.47年 | 51.08年 |
| 40歳 | 20.54年 | 39.67年 | 23.19年 | 46.22年 |
| 45歳 | 17.30年 | 35.01年 | 20.10年 | 41.41年 |
| 50歳 | 14.55年 | 30.47年 | 16.74年 | 36.68年 |
| 55歳 | 12.06年 | 26.12年 | 13.92年 | 32.04年 |
| 60歳 | 9.87年 | 21.98年 | 11.31年 | 27.49年 |
| 65歳 | 7.86年 | 18.02年 | 9.04年 | 23.04年 |
| 70歳 | 6.24年 | 14.35年 | 7.11年 | 18.75年 |
| 75歳 | 4.77年 | 11.09年 | 5.67年 | 14.72年 |
| 80歳 | 3.82年 | 8.26年 | 4.43年 | 11.04年 |
| 85歳 | 2.97年 | 5.95年 | 3.39年 | 7.95年 |
| 90歳 | 2.33年 | 4.26年 | 2.57年 | 5.57年 |
※引用:2003年 (平成15年)男性 透析患者 平均余命(生命表)、表2 2003年 (平成15年)女性 透析患者 平均余命(生命表)より一部抜粋
これは2003年時点のデータに基づく数値です。一般の方に比べると、透析患者の平均余命はやや短いことがうかがえます。とはいえ、医療技術は進歩しており、近年の透析導入患者の余命はさらに向上しているという報告もあります。 また、腎不全の原因となった疾患によっても、生存率には差が出ます。たとえば糖尿病性腎症が原因の場合、心血管系疾患などの合併症を同時に抱えていることが多いため、他の原因疾患(慢性糸球体腎炎など)に比べて余命が短くなる傾向が指摘されています。
実際には同じ年齢で透析を導入しても、人によって余命には大きな開きがあります。これは以下のような要因が影響しているためです。
これらは患者個人の取り組みや治療状況次第で改善できる部分もあります。透析治療と上手に付き合いながら合併症を防ぎ、健康状態を維持することが、結果的に長期的な生存に大きく貢献すると考えられます。
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透析患者数は年々増加しており、現在では、約35万人まで増加しています。

日本透析医学会の最新の統計調査によると、2023年末の慢性透析患者総数は343,508人となっています。
これは前年と比較して3,966人の減少(1.2%減)を示しています。
また、2022年末時点の患者数は347,474人で、2021年末から2,226人減少(0.6%減)しました。
日本透析医学会の最新の統計調査によると、透析患者数の男女比は、男性が66.9%、女性が33.1%というデータでした。
この男女比率の偏りは長年継続しており、近年も同様の傾向が見られています。
透析患者の全体の平均年齢は 70.09歳となっています。
平均年齢は年々増加傾向で、最も割合が高い年齢層は男性で 70~74 歳,女性で 75~79 歳。
また 65 歳未満の患者数は 2012 年から減少し,70 歳未満の患者数は 2017 年から減少傾向です。
75 歳未満も 2021 年から減少しており,75 歳以上の患者数が増加している状況です。
透析患者の年齢構成を男女別にみると、興味深い違いが現れます。
ここからもわかる通り、女性は男性より約10歳高い年齢で透析導入する傾向がみられます。
引用:日本透析医学会 統計調査委員会「わが国の慢性透析療法の現況(2023年12月31日現在)」

透析を受ける場合、どの程度の期間、生存できるのかは患者にとって大きな関心事です。近年の日本では、透析患者の生存率は着実に向上しています。ここでは最新データの概要を紹介し、特に長期透析を行っている方々の事例を取り上げます。
日本国内では、透析患者の1年生存率は約88%、5年生存率は約60%、10年生存率は約35%程度と推計されます。1年生存率は非常に高い一方、年数が経過するにつれて徐々に生存率が下がっていくという傾向があります。 一方、医療の進歩により、数年前と比べてもこれらの数値は上昇しています。たとえば、過去には60歳時の平均余命が「10年弱」といわれていたところ、最近では12~14年程度まで延びているとの報告があります。これは人工透析装置の改良や、透析条件の最適化などが関係していると考えられています。
引用:東京新橋透析クリニック
透析患者の平均余命が一般の方の約半分程度というデータもある一方で、20年以上、さらには30年以上にわたり透析を続けている長期透析患者も少なからず存在します。実際に国内では、透析歴30年以上の方が数千人単位で確認されており、40年以上生存されている方も珍しくありません。 長期透析が可能な理由としては、比較的若い年齢で透析導入したことや、合併症の少ない疾患背景、栄養や水分管理をはじめとする生活習慣の徹底が挙げられます。また、透析医療の進歩により、オンラインHDF(血液透析濾過)などの新しい方法が導入されるようになったことも大きな要因です。たとえば長時間透析を取り入れることで血液浄化効率を高め、体への負担を抑えられるといった効果が期待されています。 このように「透析=寿命が短い」と一概には言い切れません。統計上の数字はあくまで全体平均であり、個々の状況や取り組みによっては、統計を上回る長期生存を目指せる可能性があります。

一方で、「透析が必要な状態」と診断されても、さまざまな理由から透析を行わない選択をするケースがあります。では透析治療を受けなかった場合、どのくらいの期間生存できるのか、あるいは症状はどのように進行するのでしょうか。
末期腎不全の段階で透析を行わないと決めた場合、多くの統計や報告では、数か月~2年程度の生存期間が示されています。ただし、これはあくまで平均的なデータで、腎機能の残存度合いや全身状態、さらには緩和的な保存療法の度合いなどによって大きく異なります。 透析を全く行わない場合、体内に水分や毒素が蓄積し、高カリウム血症や肺水腫などを引き起こして、急速に症状が進行することがあります。多くの場合、呼吸困難や意識障害など、つらい症状が現れやすいため、極めて慎重な意思決定が必要です。
引用:東京新橋透析クリニック
透析をしないまま放置すると、老廃物を排出できない状態が続くことで、全身のむくみや食欲低下、倦怠感、呼吸困難などが徐々に強まっていきます。特に肺水腫による呼吸苦は相当に大きな負担となるため、苦痛緩和の観点からは注意が必要です。 最近では、最期までの苦痛をできるだけ抑えつつ、延命を最優先としない「緩和透析」という選択肢もあります。これは週に1回や短時間だけの透析を行い、苦痛の原因となる症状を和らげるというものです。透析を完全に拒否するか、フルで行うかという二者択一ではなく、中間的な方法をとることも検討されており、いずれにせよ医療スタッフや家族としっかり話し合いを行うことが大切です。
透析治療は、末期腎不全の患者が寿命をのばし、生活の質をできるだけ保ちながら暮らすための非常に重要な手段です。ここでは、生活の質(QOL)への影響や合併症管理、栄養管理のポイントを整理します。
透析は週に3回、1回あたり4~5時間ほどかけて行うことが一般的で、生活リズムへの影響も少なくありません。食事制限や水分制限、透析日と透析日以外で体調や体力の波があるなど、心身の負担となる面も否定できません。 しかし、透析を行わなければ生存期間は非常に短くなりがちです。透析を続けながらでも、適切に生活のリズムを整え、無理のない運動や趣味などを取り入れることで、日常生活をある程度楽しみながら過ごすことが可能です。実際、多くの人が仕事を続けたり、趣味を持ったりと、個々のペースに合ったやり方を見つけています。 自分に合った生活を維持するためには、規則正しいリズムの確立と、必要に応じて支援を受ける姿勢が大切です。家族や周囲に適切に協力を求めることで、精神的な安心感も得られ、QOLの向上につながります。
透析患者が長期生存するためには、合併症の管理と栄養管理が極めて重要です。 まず、心不全や不整脈、脳卒中、感染症などのリスクを軽減することが第一歩になります。透析後の状態を常に把握しながら、適切な薬物療法を受けることで、重篤な合併症の発症リスクを下げることができます。シャント感染やカテーテル感染なども透析患者では一般的な問題の一つなので、手洗いや使用物品の消毒など基本的な対策を徹底することが大切です。 栄養管理に関しては、過度な制限だけが目的ではありません。透析によってたんぱく質が失われることもあり、体力を維持するために必要なエネルギーや栄養素を十分に摂取することが求められます。食事制限が重要である一方で、低栄養状態に陥ると、筋力や免疫力が落ち、かえって寿命が縮む傾向も指摘されています。 さらに貧血予防や骨代謝異常のケアも見逃せません。エリスロポエチン製剤を適切に使うことで腎性貧血をコントロールし、カルシウム・リンのバランスを保つためのリン吸着薬や活性型ビタミンDの投与によって、骨折や血管石灰化のリスクを下げます。こうした多方面からのアプローチを重ねることで、透析患者の健康寿命をのばし、生活の質を維持することが可能になります。
透析患者の余命は、一般の方と比べると短くなる傾向があります。しかしこれはあくまで統計上の数値であり、合併症の管理や生活習慣の改善、医療技術の進歩などによって個人差が大きくなります。透析を受けることで、数十年と生き生きと過ごしている人も多く存在し、「透析だから」と悲観ばかりするのではなく、自分自身でコントロールできる部分を探して積極的に取り組むことが大切です。
透析治療によって体が制限される場面もありますが、その一方で日常を大切にし、家族や医療スタッフと協力して適切な管理を続けていけば、自分の望むライフスタイルを追求し続けられる余地は少なくありません。医療者や周囲のサポートを十分活用しながら、透析を前向きに捉え、一日一日を充実させる工夫を重ねてみてください。
以上が「透析患者の余命について | 透析をした場合の生存率・治療の重要性」に関する概説です。余命の数字は目安に過ぎず、個々の状態は大きく異なります。透析そのものの進歩やケアの方法、生活改善によって、医療統計を超えて長く生きられる方は少なくありません。今後も新しい治療法や技術の研究が進むことで、透析患者の生活の幅や平均余命はさらに改善する可能性があると考えられます。自分らしい人生を送るためにも、疑問や不安はその都度医療スタッフに相談し、必要な支援を受けながら一歩ずつ前向きに進んでいくことが大切です。