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リンと腎臓病について

腎臓病患者にとって、リンの管理は健康維持のための重要な課題です。腎機能が低下すると体内のミネラルバランスが崩れ、様々な合併症を引き起こす可能性があります。本記事では、リンと腎臓病の関係、リン摂取の適切な管理方法、そして食事選択のポイントについて詳しく解説します。

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リンの役割と腎臓病との関係

リンは生命維持に欠かせないミネラルの一種です。

正常な腎機能を持つ人では、血液中のリン濃度は腎臓の調節機能によって一定に保たれています。

しかし、慢性腎臓病(CKD)患者では、腎機能の低下に伴って余分なリンを尿中に排泄できなくなるため、高リン血症を引き起こします。

高リン血症はCKD患者の腎機能低下、死亡および心血管疾患の独立した危険因子であることが研究で明らかになっています。

そのため、すべてのCKDステージにおいて血清リン値を各施設の基準値内に保つことが推奨されています。

CKD-MBDとリンの関係

腎機能の低下に伴って生じるCKD mineral bone disease(MBD)は、心血管疾患(CVD)の発生や生命予後の悪化に関係します。CKD-MBDに関する主な因子には、カルシウム、リン、副甲状腺ホルモン(PTH)、fibroblast growth factor(FGF)23があります。

高リン血症が長期間続くと、以下のような合併症が引き起こされる可能性があります:

  • 動脈硬化の進行
  • 心不全
  • 脳梗塞
  • 二次性副甲状腺機能亢進症(骨が弱くなり、骨折リスクが高まる)

リン摂取とたんぱく質の関係

リンの摂取量はたんぱく質の摂取量に大きく影響されます。一般に、たんぱく質1g当たりのリンは約15mgとされています。そのため、たんぱく質摂取制限を行うことが同時にリンの摂取制限になり得ます。

以下の図表は、リン摂取量とたんぱく質摂取量の関係を示しています:

リン摂取量とたんぱく質摂取量の関係

たんぱく質摂取量(g/日)リン摂取量の目安(mg/日)
40600
50750
60900
701050
801200

※たんぱく質1g当たりリン約15mgとして計算

リンの生物学的利用率と供給源

リンは3つの供給源により生物学的利用率が異なります:

  1. 植物性食品: 生物学的利用率20~40%
  2. 動物性食品: 生物学的利用率40~60%
  3. 食品加工に用いられる無機リン: 生物学的利用率90%以上

つまり、同じ量のリンが含まれていても、食品の種類によって体内に吸収される量が大きく異なります。特に無機リン(食品添加物として使用されるリン酸塩など)は吸収率が非常に高いため、加工食品の摂取には注意が必要です。

食品群によるリン/たんぱく質比率の違い

食品個々のリン/たんぱく質比率は食品群によって異なります。以下の表は、主な食品群のリン/たんぱく質比率を示しています。

食品群別のリン/たんぱく質比率

食品群リン含有量(mg)たんぱく質量(g)リン/たんぱく質比
穀類110.98.613.7
いも類48.22.127.7
豆類325.020.315.6
種実類302.912.223.9
野菜類53.72.426.7
果実類17.10.726.9
きのこ類91.13.229.8
藻類286.416.316.0
魚介類308.824.012.7
貝類173.314.412.5
いか・たこ403.026.913.7
水産練り製品111.711.79.7
肉類179.117.911.0
肉加工品247.520.613.2
乳類308.112.125.3
卵類253.713.116.7

この表から分かるように、たんぱく質源として利用される動物性食品(魚介類・肉類)のリン/たんぱく質比は比較的低く(約11~13)、一方で乳製品(乳類)や植物性食品の一部(いも類、野菜類、果実類、きのこ類)はリン/たんぱく質比が高い(約25~30)傾向にあります。

効率的なリン管理のためのたんぱく質選択

腎臓病患者が適切なたんぱく質を摂取しながらリンを管理するためには、リン/たんぱく質比率が低い食品を選ぶことが重要です。リン/たんぱく質比が低い食品(たんぱく質の量のわりにリンが少ない食品)を優先的に選ぶことで、必要なたんぱく質はしっかり摂りつつ、リンの摂取量を抑えることができます。

リン/たんぱく質比が低い食品と高い食品の例

リン/たんぱく質比が低い食品リン/たんぱく質比が高い食品
鶏の手羽肉・ひき肉レバー・ホルモン
豚もも肉わかさぎ・ししゃもなどの小魚
卵白牛乳・ヨーグルト
ブリなどの魚プロセスチーズ・アイスクリーム
カマンベール・モッツァレラチーズいも類
水産練り製品きのこ類

食品添加物由来の無機リンについて

食品添加物由来の無機リンの問題も近年注目を集めています。日本食品標準成分表ではこれらの食品添加物も含めて分析値を示していますが、添加物(無機リン)としてどれだけ含有されているかを、食品個々に論じることは困難です。

加工食品に多く使用される無機リン(リン酸塩)は吸収率が高いため、以下のような食品には特に注意が必要です:

  • インスタント食品
  • 加工肉(ハム・ソーセージなど)
  • 清涼飲料水(特にコーラ系飲料)
  • 練り製品
  • 加工チーズ

非透析患者のリン摂取指導のポイント

非透析患者のリン摂取指導は、以下のポイントに注意して行うことが重要です:

  1. たんぱく質の指導と関連して行う
  2. 1日の総摂取量と検査値をあわせて評価する
  3. 必要に応じてリン吸着薬も使用する
  4. 血清リン値を基準値内に保つことを目標とする

サルコペニア予防とリン管理の両立

高齢の腎臓病患者では、サルコペニア(筋肉量の減少)の予防も重要な課題です。リン制限のためにたんぱく質摂取を過度に制限すると、低栄養やサルコペニアを引き起こす可能性があります。

そのため、リン/たんぱく質比の低い食品を選択することで、必要なたんぱく質はしっかり摂取しながらリンの摂取を控えめにするというバランスが重要です。

まとめ

腎臓病患者にとってリンの管理は非常に重要ですが、たんぱく質の適切な摂取も健康維持のために欠かせません。食品のリン/たんぱく質比率を参考に、たんぱく質の量のわりにリンが少ない食品を選ぶことが効率的なリン管理につながります。

また、食品添加物由来の無機リンの摂取には特に注意が必要です。加工食品よりも自然食品を選び、調理法を工夫することも大切です。

腎臓病患者の食事管理は「食べてはいけない」という禁止ではなく、「どのくらいなら食べてもよいか」という視点で考え、食生活の質を維持しながら健康管理を行うことが望ましいでしょう。食事記録と定期的な血液検査を通じて、個々の状況に合わせた最適なリン管理を目指しましょう。

引用:日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」

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