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人工透析 余命 80代

人工透析を始める年齢が80代に差し掛かると、患者さん自身はもちろん、ご家族にとっても多くの不安や疑問が生じるものです。「この年齢で透析を始めるべきか」「余命はどのくらいあるのか」「生活の質はどう変わるのか」など、考えることは数多くあります。

80代で透析治療を受ける方とそのご家族に向けて、透析治療の基本から余命に関する統計、生活の質、そして透析以外の選択肢まで、包括的な情報をお届けします。不安を理解に変え、最適な意思決定のサポートとなることを目指しています。

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80代の透析患者さんの現状

高齢透析患者数の増加傾向

日本では80歳以上の高齢透析患者数は年々増加傾向にあります。2021年12月末時点で77,871人、全透析患者の23.1%を占めています楠本内科医院。高齢化社会の進展に伴い、透析を受ける高齢者の数は今後も増え続けると予想されています。

80代透析患者さんの特徴

80代の透析患者さんには、若い世代の患者さんとは異なる特徴があります:

  • 通院の負担が大きい
  • 透析後の血圧低下や倦怠感が顕著
  • 認知症の進行リスク
  • 複数の合併症を抱えていることが多い
  • 家族の介護負担の問題

80代透析患者さんの余命について

統計から見る余命

80歳以上では透析導入後1年以内に30.2%が死亡、平均余命は男性4.8年、女性5.6年と報告されています楠本内科医院

望星第一クリニックによれば、「同じ方法で慢性透析患者さんで計算すると、男女ともに平均余命が一般住民に比し40歳台で約20年、60歳台で10年短くなっています。80歳台では殆ど差異がなくなります」と報告されています望星第一クリニック

これは興味深い点で、若い世代では透析患者と一般人の余命の差が大きいのに対し、80代になると両者の差はほとんどなくなるということです。

余命に影響する要因

80代の透析患者さんの余命に影響を与える主な要因には以下のようなものがあります:

  1. 透析前の健康状態:透析導入前のADL(日常生活動作)や認知機能の状態
  2. 合併症の有無:糖尿病や心疾患など他の疾患の有無と重症度
  3. 栄養状態:低栄養状態は予後不良因子となる
  4. 透析治療の質:適切な透析量の確保
  5. 社会的サポート:家族や社会的サポートの有無

透析の種類と80代患者さんにとっての選択肢

血液透析

血液透析は日本で最も一般的な透析方法で、週3回、1回あたり4時間程度の通院が必要です。80代の患者さんの場合は、通院の負担や透析中の血圧変動などに注意が必要です。

しかし、多くの透析施設では送迎サービスを提供しており、スタッフや他の患者さんとの交流が生まれるという利点もあります腎援隊

腹膜透析

腹膜透析は自宅で行う透析方法で、腹腔内に溜めた透析液によって血液を浄化します。80代の高齢者でも、以下のようなメリットがあります:

  • 通院頻度が月に1〜2回程度で済む
  • 心臓への負担が少ない
  • 残存腎機能を保ちやすい
  • 自宅で静かに過ごせる
  • 家族のサポートを受けながら行うことも可能

近年は「緩和的腹膜透析療法」という概念も広がりつつあり、1日1〜2回の交換に留めることで患者さんと介護する家族の負担を軽減しながらQOLを維持する方法も注目されています楠本内科医院

保存的腎臓療法(透析をしない選択)

80代の腎不全患者さんの中には、透析を行わず保存的な治療を選択する方もいます。これは単に治療を放棄するということではなく、薬物療法や食事療法を駆使しながら、症状を緩和し、可能な限り快適に過ごすという選択です。

この選択肢は特に以下のような場合に検討されることがあります:

  • 複数の重篤な合併症がある
  • 認知症が進行している
  • 本人が「透析はしたくない」という明確な意思を持っている

80代の透析患者さんのQOL(生活の質)

透析患者さんのQOLに影響する要素

  1. 身体的要素:透析に伴う疲労感、合併症の状態
  2. 精神的要素:不安やうつ状態、透析への適応
  3. 社会的要素:家族や友人との関係、社会的活動への参加
  4. 環境的要素:住環境、医療機関へのアクセス

QOL向上のための取り組み

80代の透析患者さんのQOLを向上させるためには、以下のようなアプローチが効果的です:

  1. 透析治療の最適化:個々の患者さんに合わせた透析条件の調整
  2. 症状管理:疼痛や掻痒感などの症状の緩和
  3. 心理的サポート:不安や抑うつ症状への対応
  4. リハビリテーション:筋力や身体機能の維持
  5. 家族の理解と協力:家族への教育と支援

透析中の合併症と対策

80代で特に注意すべき合併症

  1. 心血管疾患:透析患者さんの主要な死因
  2. 感染症:免疫力の低下により罹患リスクが高まる
  3. 低血圧:透析中の急激な血圧低下
  4. 骨折:骨粗鬆症によるリスク増加
  5. 認知機能低下:特に血液透析による急激な体液変化が影響する可能性

合併症予防のための対策

  1. 適切な透析条件の設定:急激な体液変化を避ける
  2. 感染予防:シャント管理や手洗いの徹底
  3. 栄養管理:低栄養状態の予防
  4. 運動療法:可能な範囲での身体活動の維持
  5. 薬物療法の最適化:多剤併用の見直し

終末期ケアと意思決定

事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)の重要性

80代の透析患者さんにとって、将来の治療方針について事前に考え、家族や医療者と共有しておくことは非常に重要です。特に以下のような点について話し合っておくことが望ましいでしょう:

  1. 合併症が重篤化した場合の治療範囲
  2. 透析継続が困難になった場合の対応
  3. 心肺停止時の蘇生処置について
  4. 終末期の過ごし方の希望

緩和ケアの導入

透析患者さんにおいても、症状が進行した際には緩和ケアの導入を検討することが重要です。緩和ケアは、透析患者の痛みや苦痛などの症状を緩和して精神的にも社会的にも生きることそのものの意味としても患者の希望に寄り添い援助するケアです東京透析フロンティア

家族へのサポートと相談先

家族の負担軽減のために

80代の透析患者さんを支えるご家族の負担は大きなものです。以下のようなサポートを活用することが大切です:

  1. 介護保険サービス:訪問介護、デイサービスなど
  2. 透析施設の送迎サービス
  3. レスパイトケア:一時的な入所による休息
  4. 家族会や患者会:情報交換や精神的サポート

相談できる専門家や窓口

  1. 透析施設のソーシャルワーカー
  2. 地域包括支援センター
  3. 腎臓病患者会
  4. 高齢者総合相談窓口

まとめ:80代での透析治療を考える際に大切なこと

80代で透析治療を受けることは、様々な課題があるものの、適切な治療とサポートによって生活の質を維持することは可能です。最も大切なのは、患者さん自身の価値観や希望に沿った選択をすることです。

  1. 十分な情報収集:透析の種類や方法、予想される経過について理解する
  2. 医療者との対話:疑問や不安を率直に医療者に伝え、相談する
  3. 家族との話し合い:家族の理解と協力を得るための対話
  4. 生活の質の重視:単に生存期間だけでなく、生活の質を重視した選択
  5. 柔軟な対応:状況の変化に応じて治療方針を見直す姿勢

透析治療は決して容易なものではありませんが、適切な医療とケア、そして周囲のサポートによって、80代であっても尊厳ある生活を送ることができます。何よりも大切なのは、患者さん自身の意思と希望を尊重し、それに沿ったケアを提供することです。

80代・疾患別の余命データ

透析患者の余命は年齢や原因疾患によって大きく変動します。年齢が若いほど合併症が少なく、体力があるため、長期間の透析継続が可能な場合が多い一方、高齢になるほど合併症のリスクや体力の低下などから、平均余命は短くなる傾向があります。 以下は、過去の統計に基づき、透析導入後の男性・女性の平均余命と同年代の一般人口の平均余命を比較した一例です。

日本の透析患者さんの平均余命 (2003年) 男性 女性 0 10 20 30 40 50 60 0 10 20 30 40 50 60 平均余命 (年) 平均余命 (年) 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 年齢 (歳) 年齢 (歳) 一般人 (男性) 透析患者さん (男性) 一般人 (女性) 透析患者さん (女性) 2003年 (平成15年)男性 透析患者 平均余命(生命表)、表2  2003年 (平成15年)女性 透析患者 平均余命(生命表)より一部抜粋
年齢透析患者 平均余命(男性)一般人口 平均余命(男性)透析患者 平均余命(女性)一般人口 平均余命(女性)
80歳3.82 年8.26 年4.43 年11.04 年
81歳3.59 年7.75 年4.23 年10.37 年
82歳3.36 年7.26 年3.99 年9.72 年
83歳3.17 年6.80 年3.81 年9.10 年
84歳3.08 年6.36 年3.65 年8.51 年
85歳2.97 年5.95 年3.39 年7.95 年
86歳2.70 年5.57 年3.32 年7.42 年
87歳2.66 年5.21 年3.14 年6.91 年
88歳2.47 年4.87 年3.02 年6.44 年
89歳2.40 年4.55 年2.80 年5.99 年

※引用:2003年 (平成15年)男性 透析患者 平均余命(生命表)2003年 (平成15年)女性 透析患者 平均余命(生命表)より一部抜粋

透析患者の余命について | 透析をした場合の生存率・治療の重要性(年齢別・疾患別の余命データ)をもっと見る

透析患者数の推移

透析患者数は年々増加しており、現在では、約35万人まで増加しています。

日本透析医学会の最新の統計調査によると、2023年末の慢性透析患者総数は343,508人となっています。

これは前年と比較して3,966人の減少(1.2%減)を示しています。

また、2022年末時点の患者数は347,474人で、2021年末から2,226人減少(0.6%減)しました。

透析患者の男女比

日本透析医学会の最新の統計調査によると、透析患者数の男女比は、男性が66.9%、女性が33.1%というデータでした。

この男女比率の偏りは長年継続しており、近年も同様の傾向が見られています。

透析患者の年齢別傾向

透析患者の全体の平均年齢は 70.09歳となっています。

平均年齢は年々増加傾向で、最も割合が高い年齢層は男性で 70~74 歳,女性で 75~79 歳。

また 65 歳未満の患者数は 2012 年から減少し,70 歳未満の患者数は 2017 年から減少傾向です。

75 歳未満も 2021 年から減少しており,75 歳以上の患者数が増加している状況です。

透析患者の年齢構成を男女別にみると、興味深い違いが現れます。

  • 男性:70〜74歳の年齢層が最も多い
  • 女性:75〜79歳、次いで80〜84歳の年齢層が多い

ここからもわかる通り、女性は男性より約10歳高い年齢で透析導入する傾向がみられます。

引用:日本透析医学会 統計調査委員会「わが国の慢性透析療法の現況(2023年12月31日現在)」

参考文献・リソース

  1. 日本透析医学会 統計調査委員会 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2003年12月31日現在):43-47
  2. 日本透析医学会 統計調査委員会 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2016年12月31日現在):9
  3. 腎援隊 - 透析療法の治療成績(生存率)について
  4. 楠本内科医院 - 腹膜透析について
  5. 望星第一クリニック - 透析Q&A
  6. 東京透析フロンティア - 透析開始後の寿命はどれくらい?

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